最後まで面倒見るからね
11月29日。
朝。玄関先で、パコが冷たくなっていた。
1995年10月1日、パコと出会った。
当時鳥取のアパートに住んでいて、玄関のドアを開けると前の通路を猫が数匹走っていた。「ちっちっ」と舌を鳴らして呼ぶと、1匹のキジ猫が寄って来た。子猫ではないが、成猫というにはまだ若い。おそらく生後10ヶ月ほど。家に入れて牛乳をやるとペロペロ飲んだ。口元が白くてとてもかわいかった。外に出ようとしないので、その晩部屋に泊めた。
次の日、外に出しても逃げようとしないので、飼おうと決めた。
「最後まで面倒見るからね」と約束した。
トイレや餌を買いに行き、名前をつけた。
ラジオスペイン語講座のテキストに載っていた名前。最初はモニカとつけた。顔がかわいいのでメスだと思ってしまった。よく見ると確かにオスだったので、パコと名づけた。パコはフランシスコの愛称。その日前後がちょうどアッシジの聖フランシスコの記念日か何かで、ちょうどよかった。その日か、前日の新聞の一面のコラムに、当時のクリントン大統領一家が飼っているソックスという名前の猫の記事が載っていたのを覚えている。猫のことを考えていたら、パコと出会うことができた。
本人には悪いけれど、去勢手術を受けさせた。
予防注射も打った(その後も一度も欠かしていない)。
雪の日に足跡をつけて外に遊びに行くパコ。
アパートの階段の下で友達と話していたら、「早くおいでよ」と言わんばかりに会談の上から催促して鳴くパコ。
思い出すとぞっとする一番の思い出は、バイクの後ろに(ケージに入れて)乗せて、国道・高速道路経由で宮崎まで走ったこと。関門海峡の手前から、接近していると走らなかった台風の影響で強風に悩まされ、人吉付近では台風の風雨が強く高速道路が通行止めになり、猫連れなのでホテルにも泊まりがたく、そのまま人気のない国道を走って実家に帰った。ケージから出すと、ずぶ濡れのまま固まっていた。
その後富山に引っ越した時ももちろん連れて行った。アパートの窓から転落したり、早朝に目を覚まして電気のひもを引っぱって明かりをつけたり、ラジオに乗ってスイッチを押したり。にぎやかさに悩まされた。部屋に入ってきたコウモリを追いかけたりもした。
バイクの旅は一度だけで、あとは電車と飛行機で何度も一緒に帰省した。その頃は体重が7キロほどあり、ケージに入れても動き回るので、持ち歩くのが非常に大変だった。
施錠していないすべての引戸を開けることができた。
肉や魚、乳製品以外にも、なぜかトウモロコシや納豆、あんこなどを舐めている時があった。基本的にドライフードを与えていたが、時折魚などを炊いてやると大喜びして、暑いうちにかぶりついていた。あまり猫舌ではなかった。
出かけても必ずその日のうちに帰ってきた。
ただ一度だけ、JICAで2年間ブラジルに赴任する2日ほど前、家を出たまま帰ってこなかった。夜中に近所を探して歩いても見つからずじまい。そして出発当日の朝に帰ってきた。あれは、何か通じるところがあったのだろうか…
7年前に子供が生まれてからはあまり相手をしてやれなかった。
10年ほど前に猫エイズにかかり、それでも時々ケンかで怪我する以外はずっと元気に過ごしていた。
ここ数年、年をとり、体重も減ってきていた。
先月半ば頃から、食べる量が減り、元気がなくなってきていた。
好きな缶詰も食べず、背骨が浮き出るほどやせ衰えてきた。
病院に連れて行って点滴を売ってもらったりしたが、もはや打つ手はなかった。
水はよく飲んだ。
一日中眠っていた。
病院でもらった流動食を注射器で飲ませると、ペチャペチャ口をを動かした。
11月最後の土日頃から、部屋に異臭が立ち込め始めた。
新しく変えたトイレの砂の匂いかと思ったが、よく考えたら、パコの体から発する匂いだった。その匂いが毛布やトイレ、私の体にも染み付いた。
もう、水も飲まず、注射器で砂糖水を与えても、口も動かさなかった。
呼吸も浅く、体温も下がってきていた。
28日の夜、2階に連れて上がって一緒に寝ようと思ったが、夜中にトイレに行きたくなったり水を飲みたがったりするといけないと思い、パコを残して2階のベッドで寝た。
まだ、あと少し、大丈夫だと思っていた。
最後は膝の上で抱きたかったけれど、叶わなかった。
もっとかわいがってやればよかった。
火葬し、骨を拾った。
頭蓋骨の頭頂部が少しへこんでいるのが、生前と同じだった。
亡くなった日の夜、パコの半分も生きていない7歳の子供が手紙を書いた。
パコへ
パコはいつも元気でいろんなこと、してたね。でも、びょうきになってからは
ぼくのもうふの上でねたり、さとう水をのむばかりだったね。
天国にいっても、じいちゃんにかわいがられてね。
2011年11月30日に骨をひろいに来るね![]()
さようなら、パコ。
パコ、天国に行っても、みんなをすきでいてね。
家ぞくもぱこのことわすれないからね。
また声が聞きたい。



































